コラム

2015.02.18

小売業におけるCRMの本質、とは??

(1)小売業におけるCRMとFSPの気になるカンケイ
今回のテーマはCRM、ということで弊社サービスの1つである小売業様へのお役立ち業が主題です。

CRMとはCustomer Relationship Managementの略で一般的には「情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法のこと。詳細な顧客データベースを元に、商品の売買から保守サービス、問い合わせやクレームへの対応など、個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して管理することにより実現する。顧客のニーズにきめ細かく対応することで、顧客の利便性と満足度を高め、顧客を常連客として囲い込んで収益率の極大化をはかることを目的としている」といった定義がなされています。
一方でかつて(ざっと10年ほど前ですね)、FSP(Frequent Shoppers Program)という呼び方が大流行しました。FSPは「ポイントカードやサービス提供カードといった顧客カードを発行して顧客1人1人の購買データをとらえながら、顧客を購入金額や来店頻度によって選別し、セグメント別にサービスや特典を変えることによって個々の顧客に最も適したサービスを提供することで優良固定客の維持・拡大を図るマーケティング手法のこと。
小売業界では自社の店舗で購入した買物金額の累計によって各種特典を提供する場合が多い」と定義することができます。非常に雑駁な言い方をすれば、CRMの実現手段の1つとしてFSPが位置づけられる、といったところでしょうか。

(2)小売業のCRM、その実態は・・・
一般的にCRMと言えば、コールセンターやSFA(Sales Force Automation:営業支援システム。顧客データベースで顧客リストを分析し見込み客や優良顧客を抽出するといった機能がCRMパッケージとして組み込まれることがあります)などのITソリューションをイメージされる方が多いと思いますが、小売業においてはポイントカードによる顧客情報の管理が柱となります。
小売業でどれほど顧客情報を活用できているか?についてはなかなか実態が掴めない(オープンな情報があまりない)のですが、ポイントカード導入企業でのFSP実施状況に関する調査レポート(*1、*2)に以下のような結果が記載されています。

<2007年調査>※調査対象:ポイントカード発行企業100社
・ 46%の企業がFSPを実施していた。
・ FSP実施企業は、2004年調査と比べると10%上昇していた。
<2009年調査>※調査対象:ポイントカード発行企業103社
・ 92%の企業がポイントによる囲い込み効果は有効に機能していると回答。
・ 72%の企業が顧客データと購買データを連動させていると回答。

もちろん個々の企業で活用度はマチマチかとは思うものの、ポイントを有効と考え、一定のデータ活用をしている状況が垣間見えます。
日頃、小売業様との取り組みをしている身としては「昔に比べれば、CRM的な見方も随分浸透したなぁ」というのが偽らざる実感です。例えば、クライアント以外の小売業の方々と話をしても「上位顧客」や「優良顧客」というワードを主語とした仮説を立てられているケースが非常に多くなったと感じます。言い換えるとマネタリー基準(購買金額)あるいはフリークエンシー基準(来店頻度)による顧客識別がごく自然に行われるようになったという変化が見られます。
『上位30%のお客様が売上高の70%を占めている』とか、
『今月来店されたお客様のうち、ざっと3割は来月来店されない』、
といった顧客の購買・来店実態が、ポイントカードのデータによって白日の下にさらされたことが、小売業側の意識を変える契機となったと考えられます。

(3)小売業のCRMに見られる変化―2つの方向性
こうした顧客識別という視点を持ったことで、小売業における仕事のやり方が大きく2つに変化してきたな、と近ごろ深く感じ入る次第です。
大きな変化の1つ目は、チラシやポイント○倍といったバラマキ型販促(小売業におけるマスプロモーションでしょうか)一辺倒ではなく、対象者を絞ったターゲット型販促が活発になってきたことです。例えば、
・ 1人当り購買金額だけでなく、特定カテゴリや商品の購買有無によってお客様をセグメント化し様々な商品クーポンをパーソナルに出力する
・ 競合が新規出店した店舗で、来店頻度のトレンドと住所データ(居住エリア)によってお客様をセグメント化し、割引クーポン付きDMを毎月送付する
といったターゲット型販促がごく自然に企画され、継続されるようになったと言えます。
変化の2つ目は単なるマネタリー基準やフリークエンシー基準による識別に止まらず、お客様の買物行動のパターンを洞察し、その生活スタイルを見極めようという発想がちらほらと現われだしたことです。この代表例が顧客クラスター分析で、お客様一人ひとりの購買実績を基に「買っているモノの特徴」でセグメント化していく手法です。
従来は「もっとデータを活用しましょう!」と弊社側から「ご提案」することが多かった事案なのですが、これが最近は小売業様から自発的に要望されるケースが増えた、ということです。これって結構凄いです。

(4)顧客クラスターの威力・・・
顧客クラスター分析の具体的な手法は当コラムのバックナンバーをご参照いただくとして、ここでは小売業様の現場でどのような活用をしているか?というこぼれ話をしたいと思います。
弊社が主にお取り組みをしている食品スーパー様やドラッグストア様においては、いかに精緻なセグメンテーションとターゲティングを行ったとしても、売場そのものは来店されるお客様を広く受け入れられなければなりません。従い、顧客識別の切り口を如何に施策展開するかが実務レベルの大きな課題となることが多いと言えます。これに対する一つの解が、先に触れたターゲット型販促への活用です。
以下は「土用の丑の日」で「うなぎ」を売込むというテーマでの販促検証例です。

<ターゲットクラスターにおけるうなぎの売込み検証>
・ 事前に行った顧客クラスター分析で12のクラスターを抽出
・ 各クラスター別に「うなぎ」の単品購入率を直近データで算出し、
・ 単品購入率の中央値が特に高いクラスターを選出し、売込みへの反応が高いと予測
・ 土用の丑の日に行った「うなぎ」の売込み実績を各クラスター別に確認
・ 事前に予測したクラスターが実際に反応していたか検証

事前の購入率から反応が高いと予測されたクラスターは「7」と「3」でした。
実際にこのクラスターはうなぎをよく購入してくださったのか・・・?
■顧客クラスター別「うなぎ」購入率中央値×土用の丑の日におけるうなぎ購入率

123

この結果は見ての通りです。
事前に確認できる「うなぎ」の購入率が高かったクラスター7と3は、実際の売込み期間でもとくに高い購入率をマークしています。このケースでは事前のクーポン発行などは行っていないのですが、購買履歴による顧客クラスターがお客様の好むもの、よく買うものを如実に表しているのだなと実感した検証例でした。

このほかにも顧客データを基点とした売場改善の事例などもあるのですが・・・それはまたの機会にご紹介したいと思います。顧客識別をマーケティングアプローチに活かしていく。これが小売業におけるCRMの本質と言っても過言ではない・・・かもしれないかな?と、そんな風に思う今日この頃です。

参考文献
*1:矢野経済研究所, 「ポイントカードシステム・FSPに関する調査 2007年版」
*2:矢野経済研究所, 「ポイントサービス・ポイントカード市場の動向と展望 2009-2010サマリー」