コラム

2015.02.18

価格と消費者行動 1

― 参照価格と新製品の市場導入 ―

消費者の価格に対する反応については、実務や学術分野で様々な検討や研究が行われています。今回は小売店頭での価格に関連するトピックについて3つの観点で考察します。
消費者行動の研究でまず出てくる概念として「参照価格」があります。参照価格とは消費者が価格を判断する際の基準となる価格で、外的参照価格と内的参照価格に分類されます(守口 2005を参考に作成)。

参考価格

内的参照価格は消費者の過去の購買経験にもとづくため、個人ごとに基準価格が異なります。価格プロモーションで買う頻度が高いと内的参照価格は低くなります。Doob et al.(1969)では、新製品が通常価格で導入された場合と、低価格と導入されその後通常価格に戻された場合の販売数量の変化を追っています。低価格で 導入された場合は価格を通常価格にする前の販売量は通常価格の場合と比較して多いですが、通常価格に戻した後は下回っています。低価格で購買することで内 的参照価格が低くなり、通常価格を割高だと感じるようになったためと考えられます。

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新製品の導入時の価格戦略として、「スキミング価格」と「ペネトレーション価格」があります。スキミング価格では投入初期から高めの価格を設定し、流行に敏感なイノベーター層を取り込むことで短期の投資回収を目指します。他の商品とは差別化された魅力が必要となり、テレビコマーシャルや雑誌広告などのプロ モーションの投入も必要となります。ペネトレーション価格は市場への浸透を優先する考え方です。低価格により市場シェアを確保し、生産量の増加によりコス トを下げることで利益を生み出していきます。低価格にすることで販売数量が増加する、すなわち価格弾力性が高い商品に適した価格戦略で、スーパーマーケットやドラッグストアで扱われている商品はペネトレーション価格を取ることが多くなります。クーポンでの購買は通常の値引きよりも内的参照価格を下げないという研究もあり、ID-POSデータで顧客別の価格志向を計測し、価格志向の強い顧客にのみクーポンを発行する、顧客別にクーポンの値引き率を変更するという施策も考えられます。

次回はEDLP・ハイ&ローが店舗選択に与える影響について、最後にTverskyとKahnemanにより理論構築されたプロスペクト理論で扱われている「極端の回避」とプライベートブランドへのブランドスイッチに関して考察します。

参考文献
Doob, A.N., Carlsmith, J. M., Freedman, J. L, Landauer, T. K., & Tome, S., Jr. (1969) “Effect of Initial Selling Price on Subsequent Sales”, Journal of Personality and Social Psychology
上田隆穂(1999), 「マーケティング価格戦略」, 有斐閣
小川孔輔(2009), 「マーケティング入門」, 日本経済新聞社
杉田善弘他(2005), 「プライシング・サイエンス」, 同文舘出版
守口剛(2005), 「価格戦略の理論と実際:第1回 価格設定の最適化とその落とし穴」, 流通経済研究所
白井美由里(2003), 「内的参照価格に関する先行研究の展望」, 横浜経営研究