暑さ対策商品の購買動向から探る!地域による暑さの感じ方の違い


「今年の暑さはいつもより辛い…」そう思われている方も多いのではないでしょうか。新型コロナウイルス対策でマスクをすることが多いこの夏は、例年にも増して「暑さ」への対策が欠かせなくなりそうですね。

これから日本列島は本格的な夏の暑さ、夏物商戦のピークを迎えます。日本の国土は南北に長いという特性がある中で、一口に夏の天候といっても、北と南では温度が大きく異なります。その地域性を考慮しながら商売をしていくことが、重要な観点の1つです。今回は、その一助となるべく、地域による暑さの感じ方の違いを、暑さ対策商品の購入数と気温の関係から探ってみました。

暑さ対策商品の代表選手「スポーツドリンク」「熱冷却用品・用具」

今回、地域による暑さの感じ方の違いを考察するために用いたデータは、「スポーツドリンク」と「熱冷却用品・用具(以下、本文では単に『冷却用品』と呼ぶことにします)」です。 いずれも、気温が高く、日差しが強い夏場によく消費されるものです。

まずはそれぞれ購入数と気温の関係をみていきましょう。図1は横軸に最高気温、縦軸に購入数として2018年1月から2019年12月までの2年分のデータをプロットした散布図です。日々の細かい変動を平滑化してトレンドを見るために、値はそれぞれ週単位で集計しています(気温は週平均値、購入数は週合計値)。一見すると、スポーツドリンクの散布図形状は、どの地域も似ているように思えます。気温が高いほど購入数が多くなっていて、特に高温度帯では気温上昇とともに購入数が指数関数的に増えている(購入数の増加率も大きくなっている)ことがわかります。一方でよくよく見ると、地域による違いもあります。それは、購入数の伸びが大きくなる目安温度(以下「変曲温度」と呼ぶことにします)です。その温度に到達すると購入数が大きく増えるということは、供給量をコントロールする上で鍵となる重要な基準ということができるでしょう。

図1 全国各地域におけるスポーツドリンクの購入数と気温の関係

※購入指数は、当社の購買行動分析ツール「Eagle Eye」(ドラッグストア版)から集計した各地域の、2018~2019年の2年分の週別購入数データを、当該期間の平均値(100とする)に対する割合として示したもの。各地域の気温は、それぞれの地方予報中枢官署(北海道:札幌、東北:仙台、関東:東京、中部:名古屋、近畿:大阪、中国:広島、四国:高松、九州:福岡)のデータを用いている。(以下同様)

暑さを感じ始める温度は、北ほど低い

各地域のグラフを詳しく見ると、北海道ではおおむね15℃以下の温度帯では気温に関わらず購入数はほぼ横ばいですが、15℃を超えるあたりから気温の上昇とともに購入数が増えていきます。東北と関東では15℃から20℃の間の温度帯の中で購入数の伸びが大きくなるポイントがありそうです。中部以西でもおおむね20℃を境目にしてそれ以下の温度帯では購入数ほぼ横ばい、それ以上の温度帯で気温上昇とともに購入数増加の関係が確認できます。このように、地域によって変曲温度が異なる場合があります。具体的には、北の地方ほど、暑さを感じ始める温度が相対的に低く、南の地方ほど暑さを感じ始める温度が相対的に高くなることを示唆しています。要因の一つが、地域による気候差です。たとえば札幌の年間での最高気温の平年値(日最高気温平年値の年間平均)は12.9℃。一方、福岡では20.9℃と、8℃も違います。平均的な気候の違いによって暑さを感じ始める温度に違いが生じると考えられます。

冷却用品はさらに別の特徴も

図2は冷却用品の購入数と気温の関係を示しています。各地域の散布図の形状はそれぞれスポーツドリンクと似ており、北の地域ほど変曲温度が低く、南の地方ほど変曲温度が高いという点も共通しています。一方でスポーツドリンクとの違いもあります。大きく3点です。1点目は、購入数の多い、高温度帯のプロットにばらつきが見られることです。これは夏の暑さのピーク(おおむね7月下旬~8月上旬頃)を迎える前か後かの違いによるものであり、暑さのピークを過ぎれば、気温が高くても買い控える人の割合が少し多くなることに起因しているものと考えられます。ただこれはどの地域にも見られる傾向です。2点目は、冷却用品のほうがスポーツドリンクに比べて、変曲温度が全般に高いということです。スポーツドリンクの変曲温度が15~20℃に対して、冷却用品の変曲温度は25~30℃となっています。冷却用品は、より本格的な暑さに反応して需要の高まりが起こると考えられます。そして3点目は北海道、東北、関東のグラフで顕著に見られる特徴ですが、低温度帯では購入数がずっとほぼ横ばいが続いていたのに対して変曲温度を突破すると突然一気に購入数が増えるということです。変曲温度付近でプロットが折れ曲がるように購入数が増加しています。気温、購入数を時系列で示した図3でもその傾向を確認することができます。

図2 全国各地域における熱冷却用品・用具の購入数と気温の関係

これらのポイントはその地域に暮らす人々が、その商品を必要とするような気候にどの程度頻繁に遭遇するかどうか、それに向けて必ず事前に周到な準備をするかどうかに関わってくるものと考えられます。北日本では冷却用品を欲するほどの顕著な暑さになる頻度が低いため、シーズン当初に在庫を準備する家庭の割合が少ないことでしょう。一方おおむね東海以西の地方では盛夏期、顕著な暑さになる頻度が高いため、シーズン当初まだ本格的な暑さになる前から準備のために購入する家庭があることを示唆しています。同じ夏物季節商品でも、より顕著な暑さに反応して購入数が増えるものに関しては、このような動きがありそうです。なお実は、この傾向は冬場の雪対策商品需要の高まり方にも通じるところがあります。冬に雪が頻繁に降る北日本では、本格的な雪のシーズン到来を見据えて早い段階からカー用品、除雪用品などの準備需要が見られます。一方、それほど頻繁に雪の降らない関東以西の太平洋側などでは、天気予報・週間予報で雪の可能性が示唆されるとあわてて人々が準備するため、需要が一気に高まります。

図3 全国4地域での熱冷却用品・用具の購入数と気温の推移

※図中緑色の線は、北海道では最高気温25℃、それ以外の地域では最高気温30℃を示している。いずれの地域も気温がこの緑色の線を突破する頃に購入指数の急上昇が見られている(図中の黒色破線)。

地域別気温感応度分析のススメ

今回のように季節によってその需要量が大きく異なる商品は、購入数が大きく伸びるきっかけとなる温度(変曲温度)を求めることが重要ですが、その値は必ずしも全国同じになるわけではなく、地域によって違いが生じます。商品によって需要がスタートするタイミングが地域によって異なり、また需要が拡大する地域的な広がりも単純に北から南あるいは南から北というわけではない場合があるのです。ポイントはその土地の平均的な気候やそのシーズンの気候推移の違いです。一般に、商品は生産製造工場から各地方の物流倉庫に一時保管し、その後各店舗に配送されて店頭に並べられるパターンが多いと思います。その需要期到来に向けて、需要の高まる地域から順番に在庫を積み、商品を配荷すれば効率的でしょう。そのために、今回分析したような地域別の気温感応度分析を行い、それに長期予報などの気温の予見を加味して計画を立案されることをおすすめします。

今夏の天候予測と、消費のポイント

気象庁が5月下旬に発表した3か月予報によると、今夏(6~8月)の気温は北海道と東北地方で平年並か高め、それ以外の地方は高めと予想されています。全国的に猛暑の可能性が高く、今回データを用いたスポーツドリンク、冷却用品はじめ、夏物季節商品は全般に売れ行き好調が期待されます。

小売業やメーカー企業で企画や計画を担当されている方など、前年の実績データと照らし合わせて今年の予算や目標を立てることが多いと思います。参考までに、今夏予想される天候と昨年の天候実績との違いのポイントをまとめます。

  • 昨年2019年7月…北陸地方と東北南部以外の多くの地域で梅雨明けが平年より遅れ長梅雨傾向。その影響で関東以西の多くの地方で7月の気温は平年並か平年をやや下回った
  • 本年2020年7月…全般に高温傾向の7月が予想される 。

今年は夏物季節商品需要の伸びるタイミングが遅れることなく、昨年よりは早まりそうです。

ただし、今夏はこれに加えて新型コロナウイルス感染拡大にともなう生活様式の変化の影響を考慮する必要があります。購買動向が、気温だけでは説明できない動きになることが予想されます。例えば通常年に比べて学校の夏休み期間が短縮されれば、7~8月に学校で給食を食べる回数が増え、家庭での昼食需要が少し減る可能性があります。非常に気温の高い時期の給食は、食中毒の発生に特に細心の注意を払う必要があります。海水浴場の開設中止、レジャー施設の営業縮小などを考えると、水着、浮き輪、虫取り網、花火などの購買動向にも影響が出る可能性があります。総合的に勘案しなければならないことでしょう。

気象データと購買データを掛け合わせた分析にご興味のある方はぜひお気軽に当社へお問い合わせ(リンク先https://www.truedata.co.jp/contact)ください。宜しくお願いします!

株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。