「早すぎる夏」がもたらす消費への影響とは?

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。近年、梅雨入り前、梅雨期間中、梅雨明け後の天候の変化がはっきりせず、梅雨期間中にも関わらず梅雨明けしたような夏空が続くケースが増えているように感じます。今年(2025年)も、九州北部から東北にかけての各地では6月8日から14日にかけて梅雨入りが順次発表されましたが、わずか数日後の18日頃には日本付近から一旦梅雨前線が姿を消し、広く太平洋高気圧に覆われる天気図パターンとなるなど、梅雨期間中にも関わらず真夏のような状況となりました。そんな「早すぎる夏」の到来によって、気温に敏感な主要商品の売上にどのような影響があったのか、調べてみました。

分析カテゴリ

今回は、食料品、日用品部門それぞれにおいて気温との完成性が強い上位カテゴリのデータ(週別)を、弊社True Data の提供する購買データ分析ツール「Dolphin Eye」の中から抽出しました。なお、気温と負の相関が強い日用品(寒いと売れる日用品)は夏場の売上がかなり小さく、年による売上の違いが見えづらいため、除外しています。

図表1 分析対象カテゴリ
※食料品はスーパーマーケット業態の、日用品はドラッグストア業態のデータを使用

各カテゴリの、昨年と今年の売上推移

図表1に示した6カテゴリの売上推移グラフを順に示します。

  • コーヒードリンク
図表2 コーヒードリンクの売上推移

【解説】この6月の購買動向は、前年と大差ないようにみえます。金額ベースでは昨年を上回る結果もあるのですが、コーヒードリンク(アイスコーヒー)に対する早すぎる夏の反応は小さかったのかもしれません。

  • ファミリーアイス
図表3 ファミリーアイスの売上推移

【解説】6月中旬に指数が大きく跳ね上がり、昨年も大きく上回る水準となりました。ファミリーアイスの購買動向への影響は大きかったようです。

  • 男性用制汗防臭剤
図表4 男性用制汗防臭剤の売上推移

【解説】6月中旬に指数が大きく跳ね上がり、昨年も大きく上回る水準となりました。また昨年の指数のピークと比べても、それを上回る水準になった模様です。男性用制汗防臭剤の購買動向への影響は非常に大きかったようです。

  • 殺虫剤
図表5 殺虫剤の売上推移

【解説】6月中旬に指数が大きく跳ね上がり、昨年も大きく上回る水準となりました。殺虫剤の購買動向への影響は大きかったようです。

  • ココア
図表6 ココアの売上推移

【解説】ココアは、寒いと売れる商品です。6月は昨年と比較して指数が下回る水準が続いたようです。ココアの購買動向も影響を受けた可能性があります。

  • チョコレート
図表7 チョコレートの売上推移

【解説】チョコレートも、寒いと売れる商品です。全般的に前年と比較して指数が下回る状況が続いているため、早すぎる夏の影響を見極めるのは難しいのですが、気温との関係性に矛盾しない結果となっており、多少は影響を受けた可能性があります。

結果と考察

前倒しでの猛暑到来で「早すぎる夏」となった今年、気温との関係性が強い各商品の購買動向に影響が見られました。たとえば、暑いと売れる商品は例年よりも早い時期から売上を伸ばす一方で、寒いと売れる商品は夏場の苦戦が早く始める傾向にありました。ただ、カテゴリによって購買動向への影響が異なる部分があり、これらのカテゴリ含め、継続的に今夏の推移を見守っていきたいと思います。

まとめ

ここ最近2年間は、残暑の長引く点が大きく注目されていた夏でしたが、今年は本格的な暑さのスタートが早まる前倒し傾向が見られました。長引く残暑に続いて、早すぎる夏到来も今後、重視すべき課題であることを示したものと言えます。

※抽出データ                                   株式会社True Data「Dolphin Eye」に搭載されている、「コーヒードリンク」「ファミリーアイス」「ココア」「チョコレート」(業態:スーパーマーケット)、「男性用制汗防臭剤」「殺虫剤」(業態:ドラッグストア)カテゴリの週次の買物指数(期間:2023年7月10日~2025年7月6日、データ抽出日:2025年7月14日、買物指数:来店者100万人における購入点数)。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。