商品前線をご存じですか?

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。つい5年ほど前までは、最高気温が40℃を超える地点があったというニュースは、数年に1度あるかないかというくらいの比較的珍しいものでした。それが2018年以降、毎年全国のどこかの観測地点で最高気温40℃を超える日が見られるようになり、今年2021年も8月8日に岐阜県多治見市で最高気温40.6℃を観測しました。4年連続して、日本のどこかの観測地点で40℃超えの気温を記録したことになります。もはや40℃超えの気温が、それほど珍しい現象ではなくなってきつつあり、場合によってはこの先数十年以内に東京都心でも40℃を超える気温が観測されるかもしれません。地球温暖化の影響と考えられる現象を、身をもって体験できる一つです。

さて先日8月18日(水)、弊社から今年の秋冬の「商品前線」をプレスリリースにて発表させていただきました。是非そちらも参照ください。今回は、その商品前線について、作成に携わった人間として少し解説させていただきたいと思います。

商品前線とは

購入数と気温との間に関係性がある商品において、いくつか特徴的な傾向を示す例があります。例えば、気温上昇とともに単調に購入数は増加(または減少)し、気温下降とともに単調に購入数は減少(または増加)するという関係。飲料系の商品によく見られる傾向です。

また、ある温度水準までは購入規模が小さく、また変動幅も大きくなくほぼ横ばいの状態が続くのに対し、一定の温度条件を突破するとそれ以降は温度変化とともに購入数が増加する関係性が見られる場合もあります。

後者の例では、その温度条件に合わせて適切に売場や陳列量を増やさないと商品の欠品につながる可能性があり、それを防ぐ必要があります。

商品前線は、以上のような例の場合、全国のどのエリアでいつくらいの時期に売場や陳列量を増やすべきかの目安を、ビジュアル的に分かりやすく示しています。

そしてその商品前線も、2つのパターンの示し方があります。1つは過去の購入数実績から平均的な傾向を示したいわゆる“例年のパターン”です。もう1つは実際にこの先の気温予想(主に長期予報における気温の予想)に基づいて今シーズンの商品前線の動きはどうなりそうかを示すパターンです。

今回の商品前線、特徴とポイントは?

一般に秋冬物季節商品は、気温低下とともに購入数が増加していくため、北海道から前線がスタートし、季節の進みとともに徐々に南下する傾向を示します。春夏物季節商品はその逆で、気温上昇とともに購入数が増加していくため、九州・南西諸島方面から前線がスタートし、季節の進みとともに徐々に北上する傾向を示します。

今回リリースで発表した商品前線を描く際に参考情報とした、7月21日発表の3か月予報によると、今秋は高温傾向の可能性が高い内容でした。つまり、前線が南下して当地に到達する時期が、例年より遅れる傾向にあることを示唆します。

参考までに、「すき焼き前線」(図1)で、その見方と意味合いを解説していきます。

図1 今シーズン予想される「すき焼き前線」(当社8月18日発表のプレスリリースより)

秋冬の典型メニューとして「すき焼き前線」を作成しました。これは当社カテゴリ「その他のたれ」の中で、商品名に「すきやき」あるいは「すき焼き」の文字列が含まれる商品を抽出し、データを合算したものと気温との関係性を分析した結果に基づき作成したものです。この図について要約すると、すき焼きのたれは、東北・北陸以北の地域では購入数の伸びがおおむね8月中旬に始まり、関東などでは8月下旬、山陰地方を除く近畿以西の各地では9月中旬、といった感じで南下していきます。

今回発表したリリースでは例年の前線の傾向を示した図は掲載していませんが、今年予想されている気温を考慮すると、各地での前線の到達時期は例年に比べてやや遅くなる予想です。なお、昨年8月~9月半ば頃にかけてほぼ全国的に記録的な高温だった影響もあり、昨年との比較で考えた場合は、やや早くなるかもしれません。すき焼きのたれの店頭での展開を拡大する時期を見極める際は、是非参考にしていただきたいと思います。

商品前線作成のススメ

商品前線は、商品のブランディング強化にもつながりますし、商談時の客観的な営業資料とすることもできます。また店舗でのPOPとしてお客様の需要を喚起し、販売促進につながることも期待できます。是非、様々な商品の“前線”を作ってみませんか!?

本ブログに対するご意見、ご感想、商品前線に関するお問い合わせ等は、お気軽にこちら(https://www.truedata.co.jp/contact)までお寄せください。

株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。