2025年12月の高温が寒さ対策商品に与えた影響を試算

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。

「日本の季節は“四季”ではなく“二季”になったのではないか」——。そんな議論が巻き起こるほど気候の話題が尽きなかった2025年ですが、象徴的だったのは「二季」が同年の流行語にノミネートされたことでしょう。

実際、今季の冬のスタート(2025年12月)は、中旬後半から下旬前半にかけて比較的高温で推移しました。この気温傾向が寒さ対策商品の売上にどのような影響を与えたのか。今回はその影響度を定量的に試算してみました。

2025年12月の気温推移と、2024年との比較

図表1は、2025年11月以降の地域平均気温平年差の推移。0℃の線より上(赤色)が平年より高かい時期、下(青色)低い時期を示しています。

図表1 2025年11月以降の地域平均気温平年差推移
※出典:気象庁HP、2026年1月29日閲覧

12月中旬後半から下旬前半にかけて、各地で気温が平年を大幅に上回りました。例年であれば「クリスマス寒波」が襲来し非常に厳しい寒さとなる時期ですが、2025年は季節外れの暖かさとなりました。

図表2 各地の2024年及び2025年12月の気温推移
※左上:札幌、右上:東京、左下:大阪、右下:福岡

図表2の各都市の気温推移グラフを見ても、2025年12月は全般に気温が高かったことがわかります。

“寒さ対策商品”の購買動向

今回、購買動向の調査対象としたのは、寒さ対策商品の代表格である「使い捨てカイロ」と「しもやけ・あかぎれ用薬」の2カテゴリです。

図表3 使い捨てカイロとしもやけ・あかぎれ用薬の買物指数推移

まず買物指数推移グラフ(図表3)を確認すると、12月はいずれのカテゴリも2025年が2024年を下回る傾向で推移しています。この期間の気温の影響が大きいことは間違いないと考えて良いでしょう。

図表4 使い捨てカイロとしもやけ・あかぎれ用薬の買物指数と気温の関係

続いて、横軸を気温、縦軸を買物指数とした両カテゴリの買物指数と最低気温との関係を散布図(図表4)で示しました。データは週別データですが、月ごとにプロットの色を変えています。水色で示した12月のプロットに注目してください。

黒い枠線が入っているのは2025年のデータ、枠線がないのが2024年のデータとなっています。

プロットは概ね、左上(低温・高需要)から右下(高温・低需要)へと規則的に並んでおり、気温と需要の強い相関(負の相関)が確認できます。注目すべきは、2025年のデータ(枠線あり)の多くが、2024年よりも下(需要減)に位置している点です。異常値が見られないことから、2025年の需要低迷は、高温による純粋な押し下げ効果であると断定できます。

気温だけの影響度を調べるひと手間

前年同月と比べた2025年12月の買物指数の落ち込みが、高温の影響であることが分かりました。ただ気温以外の要因の影響を受けている可能性もあります。それらの要因の影響を取り除いて考えるため、ひと手間加えて、気温だけの影響度合いを見積もることにします。そこで行う処理が、気温から買物指数を推算する簡易モデルの活用です。

散布図から、気温が下がっていく10月から1月にかけての期間は、買物指数と気温の相関関係が特に強いことが分かります。この期間を対象として、気温を係数(説明変数)とした買物指数予測モデル(回帰式)を作り、2024年、2025年の12月の気温をそれぞれ代入して買物指数を計算します。

なお、このような予測モデルを作っておくと、来年以降の当該期間(10~1月)の需要を予測する際にも活用できます。季節予報などから気温の予測値を調べ、予測モデルに代入すれば、気温に基づいた予想買物指数が求められます。

高温による損失は?簡易モデルの試算結果

具体的にどれほどの需要が失われたのか、試算します。まず、前項で示したとおり、今回の購買データで使用した2024年及び2025年の10月から1月までの4か月間のデータに基づき、気温を用いた簡易な需要予測モデル(回帰直線)を作成しましたのが図表5です。

図表5 「使い捨てカイロ」と「しもやけ・あかぎれ用薬」の簡易需要予測モデル
※係数は小数第一位を四捨五入した概算値

この式の2024年と2025年の最低気温平均値を代入し、その差を計算することで「高温による影響」を抽出したのが以下の図表6です。

図表6 2024年と比較した、2025年12月の寒さ対策商品の需要消失規模試算
※1か月と4.5週として計算

試算の結果、12月の高温によって、1か月あたり「使い捨てカイロ」は4,783、「しもやけ・あかぎれ用薬」は126(いずれも買物指数ベース)、前年よりも需要が消失したと見積もられます。

まとめ

もちろん、影響の度合いは地域差があるため、実務においてはより精緻な地域別データの分析が必要ですが、このようなデータ分析の蓄積と予報データの組み合わせが、今後の気候変動時代において精度の高い在庫計画、仕入れ計画に役立つことでしょう。

※抽出データ                                  株式会社True Data「Dolphin Eye」に搭載されている、「使い捨てカイロ」「しもやけ・あかぎれ用薬」(業態:ドラッグストア)カテゴリの週次の買物指数(期間:2024年1月15日~2026年1月12日、データ抽出日:2026年1月22日、買物指数:来店者100万人における購入点数)。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。