小売企業のための気象&購買データ活用法 第6回     店舗での気象・購買データ活用マニュアル(基礎編)

こんにちは。True Dataの流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。2026年最初の連載となる今回(第6回)は、店舗の現場で気象・購買データを活用する際の基本ポイントを、マニュアル形式で整理します。

活用すべき気象データの種類とタイミング

気象庁では日々膨大な種類の予報や観測データに関する情報を公開しており、それを逐次細かく確認するのは非現実的です。発注・仕入れや売場づくりなど、店舗オペレーションで参照すべき情報に絞って、限られた時間の中でも抜け漏れなく効率的にチェックすることを目指します。天気は鮮度が命ですので、意思決定の直前に最新の情報を参照するフローを定着させましょう。

図表1 予報の種類と店舗での活用シーン

天気予報から需要を読み解くポイント

天気マークだけでなく、以下の3項目を需要変化のトリガーとして捉えます。

  • ①気温

「前日差」と「平年差」を重視します。気温が急変するときや、例年に比べて季節の進みが早いときに需要が爆発します。また「日較差」は1日の中での陽気の変化の大きさを知る指標となるため、時間帯に合わせた売場づくり、品揃えに活用します。

  • ②天気

降水確率20%以上は雨の可能性ありと見なし、以下の4つの軸で降水の状況を把握します。

  • ③精度

週間予報に記載されている「信頼度」とは予報の精度に関する情報です。ABCランクの「C」は予報が変わる可能性があります。思い切った判断による在庫過多リスクは極力回避し、守りの判断をすることも必要です。

図表2 天気予報から需要の変化を読み解くポイント(気象庁HP画面を用いたまとめ)

それ以外に、お天気キャスターの解説は、マークで表現しきれない雷雨の可能性や風の強さなど補足情報の宝庫なので、なるべく最後まで解説を聞くようにしましょう。

気象×購買データを照合する際の注意点

過去の購買実績と気象を照らし合わせて検討することは大変有効です。その際には以下の「3つの落とし穴」に注意しましょう。

  • 落とし穴① 特売ノイズ

その売上が、気温によるものか、それとも催事や価格、チラシなどによるものかを切り分けて考えます。特売など気温に関係ない要因による売上の伸びなどは、ノイズとして除去して考える必要があります。

  • 落とし穴② 機会ロスによる縮小均衡

購買実績データは、ときに機会ロスを含んでいます。気象との関係をモデル化する際、過去の購買実績における最大値以上の需要を予測しにくくなり、それが繰り返されると売上の縮小均衡につながります。売上の大幅伸長に向けて気象条件がマッチした際は、過去の購買実績を鵜呑みにせず、強気の発注仮説を立てることも必要です。

  • 落とし穴③ 顧客マインドと実際の天気とのギャップ

お客様は、前日の予報で当日の行動計画や献立を考える場合があります。前日に発表された当日の予報と、当日の朝発表された当日の予報が違う場合や、テレビ等での予報と発注画面上のピンポイント予報の内容が違う場合など、顧客マインドを優先すべき場合があります。台風や大雪の予報の場合も同様です。予報がはずれても、前日には大きな準備需要がうまれ、当日は当初予報に沿った客足動向になります。

需要予測システムと、納得感のある発注

発注画面上にリコメンド値が提示される、AIなどを用いた需要予測システム。大変便利かと思いますが、時にそのリコメンド値と自分の勘にズレが生じることがあります。その場合は、以下の手順で考察しましょう。

図表3 納得感のある発注にむけた手順

過去の購買実績を背景に、AIと自身の認識のズレを確認し、最終的に納得感を持って発注数量を確定させることが重要です。

まとめ

店舗オペレーションの基本は、日々の天気予報と週間予報から、お客様のニーズの変化の兆しを読み取ることです。今回のポイントを参考に、気象&購買データに基づいた精度の高い店舗オペレーションを目指していただければ幸いです。

次回第7回も、店舗オペレーション上の気象情報の利活用と具体的なフロー手順に関する実践的なポイントをまとめます。

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〇「常盤勝美のお天気マーケティングブログ」過去記事はこちら  https://www.truedata.co.jp/blog/category/weather_marketing

〇「小売企業のための気象&購買データ活用法」バックナンバーはこちら                 第一回 「気温40℃が夏の常識に!? 小売業は「地球沸騰化」にどう立ち向かうか」              第二回 「長期予報はもっと使える! 営業企画や販売促進への活用法」                    第三回 「2週間予報や、過去データを活用した販促のやり方」                        第四回 「気象×購買データのエビデンスに基づいた販促で、訴求に説得力を」                              第五回 「季節イベント・季節現象との付き合い方」

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。