「暑さ寒さも彼岸まで」を検証する!

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。今夏も、終わってみれば猛烈な暑さ、長引く残暑でした。7月、8月は、昨年(2024年)あるいは一昨年(2023年)の方が気温の高かった地点もありますが、今年は6月半ばから真夏のような気温の日が多かったこともあり、夏季(6~8月)のトータルで考えると統計史上最も暑い年となりました。さて、その暑さが一段落する時期を示す表現に「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があります。地球沸騰化の時代、夏の暑さが一層厳しくなったここ3年で彼岸頃の気候の状況はどう変わったか、検証しました。流通業に携わる方々をはじめ、長引く残暑対策に今後どう取り組んでいったら良いかを策定する際、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

2025年9月の気温推移

図表1は、今年(2025年)9月の東京における最高気温の推移グラフです。ここで、日々の細かな気温上下の影響を除いたトレンドを見るために、データに平滑化処理(7日間移動平均)を行っています。「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり、20日頃からそれまでと比べて気温が下がり22日以降はそれまでに比べて気温が一段低い水準で推移していることがわかります。ただそれでも22日以降の気温は28℃前後と、この時期の平年気温(25~26℃)に比べるとかなり高めです。

図表1 東京における最高気温の推移(2025年9月;平滑化処理後)

ここ30年間の状況変化

特に夏の高温化が顕著となった2023年以降と、それ以前の9月の気温推移を比較してみます。こちらも同様に各年の気温の7日間移動平均値を求めて平滑化処理を行っています。それに加えてさらに、比較しやすいように1990年代以降、西暦の数字の一の位が3の年から5の年の3年間の平均値をグラフにしています。

図表2 東京における各年代の9月の最高気温推移(3年平均;平滑化処理後)

図表2を見ると、1990年代及び2010年代はそれほど明確な気温トレンドの変化は見られませんが、2020年代だけでなく2000年代も、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がぴったりのような気温トレンドの変化となっています。

ただいずれにしても、2020年代とそれ以外の3年代のグラフとの大きな違いは、ベースとなる気温水準であることがよく分かります。2020年代以外の年代は、月初めの気温がおおむね30℃前後、彼岸を過ぎた月末の気温が25℃前後と似たような傾向となっています。それに比べて2020年代は、月初めが32~33℃前後、月末がようやく28℃前後と、全体的にそれまでと比べて2~3℃高くなっています。

言い換えるなら、2010年代までは月初めの残暑が、月末には秋らしい陽気となるというニュアンスでの「暑さ寒さも彼岸まで」でしたが、2020年代は月初めの猛烈な残暑が、月末には少し落ち着いた残暑になるというニュアンスの「暑さ寒さも彼岸まで」と見なしても良いのかもしれません。

今後の「暑さ寒さも彼岸まで」の考え方

気象庁が2025年10月16日に発表した報道資料によると、2024年の二酸化炭素の年増加量は観測史上最大となった、とのことです。化石燃料の消費、人口の増加、森林の伐採、沙漠化など、様々な要因により、地球上の二酸化炭素量は増加の一途をたどっています。そしてご存じのとおり、二酸化炭素は気候の温暖化の主たる要因である温室効果を引き起こす気体(GHG:Greenhouse Gas)です。その地球大気中の増加量が過去最大となったということは、地球温暖化がおさまる方向に進んでいるどころか、当面はむしろ、まだまだ加速することを示唆しています。

これからの時代も“残暑が秋らしい陽気におさまる”ことを示唆する「暑さ寒さも彼岸まで」ではなく、“猛烈な残暑が一昔前の残暑水準に落ち着く”意味での「暑さ寒さも彼岸まで」となることでしょう。流通をはじめ各業界で、ここ数年本格的な残暑対策の施策が始まっています。今後はその施策が定番となり、ひょっとするとさらに厳しい“長引く残暑対策”が必要な時代になるかもしれません。日々の購買データから、長引く残暑を受けて消費がどのように変化しているか、細かい部分まで読み取り、新たなトレンドを見つけ、今後どのような方針を策定すべきか真剣に検討することで、一歩先を行くお天気マーケティングが実現するのではないでしょうか。そのような取り組みをぜひ当社True Dataと一緒に考えてみませんか。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。