こんにちは。True Dataの流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。今回も、主に店舗の現場で生かすための気象・購買データ活用について、解説します。今回はレイバー・スケジューリング・プログラム、以下「LSP」)に絞った内容です。
まずは雨・雪と来店客数の関係を把握する
気象情報も考慮に入れたLSPを実践するにあたり、まずは天気(主に雨・雪)と来店客数の関係を正確に捉え直す必要があります。客数は店舗の総作業量を左右する最も重要な要因の一つだからです。ここで注意したいのは、「雨や雪が降れば客数は減る」というシンプルな関係式が必ずしも当てはまらない点です。駅ナカやビジネス街のランチ時などは、外歩きを避ける心理から、ちょっとした雨ならむしろ客足が増える場合もあります。ぜひ、自店のレシート枚数データと過去の気象実績を照らし合わせ、「どの程度の雨なら影響がないのか、あるいは減少するのか」を定量的に調べてみてください。参考までに、立地の違いによる一般的な傾向をまとめました。
また、似た立地でも、駐車場の形態(立体か平面か)で影響度は変わります。こうした個別要因と、曜日の影響を考慮し、各店で独自の「雨天時の客数傾向」を把握することが第一歩となります。
店舗オペレーションの量と天気の関係
日本では、雨や雪が降らない日の方が圧倒的に多いため、それ(つまり晴れまたは曇の日)を標準と考え、雨天時に、どのような+αの作業が発生するかを整理してみましょう。

これらは項目の抜粋にすぎませんが、実際にはこれらの項目に付随する様々な作業項目があります。これらを反映した「天候別の作業指示書」をあらかじめ準備しておくことで、急な天候変化時にも、誰も対応できずにお客様に不便をかける事態を未然に防ぐことができるはずです。
スタッフを増員/減員させた方が良い気象条件とその注意事項
勤務シフトを直前に変更することは現実的に困難な場合も多いでしょう。そのため、客足が鈍る雨天時などは、普段後回しになりがちな清掃やPOP制作などに時間を充て、生産性を維持されている店舗も多いかと思います。それを考慮した上で、あえて「減員」の判断が必要になるのは、大型台風や大雪など、前日までに高い精度で深刻な影響が予測される場合が考えられます。一方、台風接近や大雪予想の前日や、急激な気温変化で季節が進む瞬間、近隣イベントがある際などは、逆にパートスタッフへの出勤要請や本部からの応援といった「増員」の判断が重要になります。
判断の際に注意しなければならないのは、予想されている気象のタイミングを細かく確認することです。台風の速度が急変したり、雪の予報でも実際は雨になったりすることは往々にしてあります。影響が出始める時間を精査し、柔軟な構えを持っておくことが肝要です。
近年の気候変動に対応した新たなLSPの軸
近年の猛暑や極端な気象変化は、従業員の皆様の体調管理リスクにも直結します。夏季日中の屋外作業の制限や、荒天時の安全確保を最優先した「臨時休業」の判断も含め、LSPには今や「安全確保」という新たな軸が求められています。
まとめ
気象と店舗オペレーションの関係を整理することは、人時生産性の向上のみならず、店長の皆さんの心理的負担を減らすことにも繋がります。「店長の勘」だけに頼るのではなく、「雨雪時の客数早見表」や「気象アラート情報連動マニュアル」を標準化しておくことをお勧めします。
次回第9回は、本部スタッフの方々が店舗を支援する(スーパーバイジング)際の気象×購買データ活用という観点で、ポイントをまとめます。
※抽出データ 株式会社True Data「Eagle Eye」に搭載されている「使い捨てカイロ」カテゴリ(業態:ドラッグストア、エリア:全国、期間:2022年5月2日~2024年4月28日、データ抽出日:2024年5月13日)の購買指数(購買指数は週別購入個数の当該期間平均値を1としたときの比率)。
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〇「常盤勝美のお天気マーケティングブログ」過去記事はこちら https://www.truedata.co.jp/blog/category/weather_marketing
〇「小売企業のための気象&購買データ活用法」バックナンバーはこちら 第一回 「気温40℃が夏の常識に!? 小売業は「地球沸騰化」にどう立ち向かうか」 第二回 「長期予報はもっと使える! 営業企画や販売促進への活用法」 第三回 「2週間予報や、過去データを活用した販促のやり方」 第四回 「気象×購買データのエビデンスに基づいた販促で、訴求に説得力を」 第五回 「季節イベント・季節現象との付き合い方」 第六回 「店舗での気象・購買データ活用マニュアル(基礎編)」 第七回 「店舗での気象・購買データ活用マニュアル(実践編)」
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。


