豆腐の種類別ウェザーマーチャンダイジング

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。今回は豆腐にフォーカスをあてて、売上と気温の関係を調べてみました。暑いときは冷奴として絹豆腐、寒いときは鍋に入れる木綿豆腐というイメージをお持ちの方が多いのではないかと思います。実際のところ、データではどうなっているのでしょうか。

豆腐の種類

今回は、豆腐の売上として、当社True Dataの分類カテゴリ「豆腐」の中から、絹豆腐(商品名に「絹」または「きぬ」のワードが含まれるもの)、木綿豆腐(同、「木綿」または「もめん」のワードが含まれるもの)、焼き豆腐(同、「焼」または「やき」のワードが含まれるもの)のデータを抽出し、その売上と気温の関係を調べてみました。

豆腐のウェザーマーチャンダイジング

豆腐は1年じゅう、様々な料理の具材として食卓に登場しますね。種類によって売上と気温の関係にどのような違いが見られるのか、年間での売上規模が大きい順に散布図(横軸:気温、縦軸:売上)を見てみましょう。

なお、ここでデータ検証時の注意事項があります。実際の購買データを見ると、コロナの影響からかどうかは判然としませんが、2020年と2021年のデータで系統的な差がありました。そのままのデータでは解析結果を図で示した時に傾向が少しわかりにくかったため、脚注の「※抽出データ」の項で示すように、それぞれの年間での平均的な売上水準を1とした比率という形で規格化処理をしています。

  • 絹豆腐
図1 絹豆腐(業態:スーパーマーケット)の購買指数と最高気温(東京)の関係
(2020年1月6日~2022年1月2日:週次データ)

まずは、冷奴や、みそ汁の具などとしてよく使われる絹豆腐です。散布図で見ても、気温が上がれば上がるほど購買指数が高くなる関係性がはっきりと分かります。季節進行とともに気温が上がっていく時期と、下がっていく時期とで、同じ温度帯の購買指数に差がほとんどないため、季節に限らず気温を変数とする方程式で、購買指数を比較的精度高く求めることができます。なお、12月は散布図のプロットの傾きより下振れしています。一方1月はプロットの傾きより上振れしています。12月、1月は気温以外の要因(おそらくカレンダー要因)で売上が上下するようです。

  • 木綿豆腐
図2 木綿豆腐(詳細は図1と同じ)

木綿豆腐を使った典型的なメニューと言えば、鍋物料理や麻婆豆腐でしょうか。低い温度帯で購買指数が高くなるという、絹豆腐とは逆の関係がわかります。一方、気温が高ければ高いほど購買指数が単調に低くなるかと言えば、必ずしもそうではないようです。最高気温30℃以上の温度帯では、気温に関わらず売上はほぼ横ばいとなっています。なお、12月のプロット(水色)は全般に、散布図のプロット密集域と比較すると購買指数は低め、1月のプロット(青色)は高めになっています。これは絹豆腐の散布図でも見られた傾向です。

  • 焼き豆腐
図3 焼き豆腐(詳細は図1と同じ)

2020年、2021年、両年のデータとも、年末の週は購買指数が通常の約6倍まで大きく跳ね上がります。12月のそれ以外の週と比べても3倍程度の購買指数です。おそらく、年末年始(特に大晦日)の食事メニューの、すき焼き用具材と考えて間違いないでしょう。

その年末の飛びぬけたデータを除外しても、低い温度帯で購買指数が高く、高い温度帯で購買指数が低いという関係性がはっきりと分かります。また、同じ温度帯でも、気温の上がっていく時期と下がっていく時期では購買指数に差が生じる様子も見て取れますので、気温というよりも体感温度に反応して(寒い/涼しいと感じるときに)売上が伸びるということが言えます。 この焼き豆腐の購買指数の動きを見ると、絹豆腐、木綿豆腐における12月の売上が、気温から想定される以上に落ち込んだのは、絹あるいは木綿豆腐でなく、焼き豆腐を買ったから、ということなのかもしれませんね。

絹豆腐⇔木綿豆腐への切り替え温度

ここで示した3つの散布図では、商品の温度帯(すなわち季節)による売上規模の変動を見るため個別にデータを指数化しています。つまり、具体的な売上規模を示していないため、商品間での売上規模を比較して見ることはできません。具体的な数値は示しませんが、売上規模は、絹豆腐>>木綿豆腐>>焼き豆腐の順番になっています。

ただ、年間での平均的な売上水準(散布図で示した購買指数が1のライン)よりも高いか低いかで、消費者の関心が高い温度帯か低い温度帯か、相対的に知ることができます。そう考えると、消費者の関心が絹豆腐→木綿豆腐に、また木綿豆腐→絹豆腐にシフトする大まかな温度帯が分かります。ここで改めて図1及び図2に注目すると、絹豆腐は20~25℃の温度帯で、プロットが購買指数1のラインをクロスしているように見えます。同様に木綿豆腐もおおむね20℃付近でプロットが購買指数1のラインをクロスしています。つまり絹豆腐と木綿豆腐、消費者の関心がシフトする温度帯はおおむね20℃と見なせるのではないでしょうか。

まとめ

今回は豆腐の中で特に、絹豆腐、木綿豆腐、焼き豆腐の気温との関係性と、その違いを調べてみました。やはり、気温が高い時は絹、気温が低い時は木綿、大晦日の食卓はすき焼きで、その具材として焼き豆腐、という家庭が多いようです。

地域によっては、温度帯に関係なく、絹あるいは木綿豆腐が主体という食文化が定着しているところもあります。今回の散布図とは状況が異なるということがあれば、それはその地域独特の食の習慣の可能性が高いと言えます。

※抽出データ                                   株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されているカテゴリ「豆腐」の中で、本文中に示した抽出条件にヒットした商品の週次の購買指数(購買指数は週別購入金額の当該年(52週)平均値を1としたときの比率)。すなわち、2020年1月6日~2021年1月3日までの52週は、その52週平均値を1としたときの比率、2021年1月4日~2022年1月2日までの52週は、その52週平均値を1としたときの比率としています。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。