こんにちは。True Dataの流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。主に流通小売りに従事する皆さんに向けた本連載です。ここ数回は店舗での活用を想定した店舗スタッフやスーパーバイザー視点での気象×購買データ活用法を解説してきましたが、今回は本部各部署での気象×購買データの活用による意思決定について解説していきます。
天候急変や気候変動への対応コンセンサス
近い将来、「異常気象」という言葉は死語になるかもしれません。それくらい、異常気象的な現象が今後、日常的に起きる可能性が高く、少なくとも気象における「想定外」の発想はなくすべきと考えます。そんなときに必要なのが、気象に関する社内ルールの共通化です。近年のような不規則な梅雨や、毎週のように発表される「10年に一度の高温予想」、あっという間に道が真っ白になってしまうほどの急な降雹(こうひょう)など、これまでの経験則が通じない時代だからこそ、組織としての判断基準が重要です。
その際、基準策定の重要な根拠となるのが、過去にあまり例のない気象現象が起こったときの購買動向です。そして、その現象が気象庁からある程度事前に予測として発信されていたものであれば、「現象前」「現象中」「現象後」の三段階にわけて傾向の違いを分析します。
商品部の情報収集力と、柔軟な対応力を高める
気象情報に関連する商品部の役割は、自分の担当する商品の購買動向特性を把握するだけでなく、気象変化等によって生じる需給のバランスの崩れを調整することも非常に重要です。それには、短期的な天気の変化や災害に関する情報も必要ですが、農作物産地をはじめとした、全世界での中長期的な天候のトレンドや異常気象の発生状況把握なども欠かすことができません。気象庁のウェブサイト内の以下のページの情報や、全世界の主要農作物の相場情報などを定期的にチェックし、早め早めに対策がとれるような柔軟性を持っておけば、売れ筋のズレを少なくすることが期待できます。
(世界の天候 https://www.data.jma.go.jp/cpd/monitor/index.html)
配送効率化とセンター在庫の最適化
災害やそれに伴う交通遮断の発生予測を怠れば、物流要因によるロスが大きくなるおそれがあります。気象情報は、円滑な配送計画やセンター・倉庫における在庫の最適化のためにも非常に重要な情報です。
例えば雨や雪など、客足の鈍りやすい気象条件が続くと予想される場合は、日配などの在庫を少し絞っておく措置や、急な高温が予想される場合は飲料やアイスなどの配送頻度を臨時で増やす措置など、調整方法とその手順を常に把握し、物流企業側と連携しておきます。
各店舗周辺の気象災害リスクの把握
個々の店舗における災害リスクは、まず店長やスーパーバイザーが地元のハザードマップなどを確認し、対象となる気象現象や災害の種類、被害の程度などを具体的に把握しておくことが重要ですが、本部サイドでも店舗展開地域単位で、そのリスクの種類や程度を把握しておくべきです。ナショナルチェーンであればなおさらです。
発生した災害の種類によってお客様のニーズがどこに集中するのかは、購買動向分析を行うことで事前に把握することが可能です。実際にその災害が発生した場合、需要集中が予期される商品の融通をスムーズに行うための手順や、本部からの応援スタッフの派遣の基準も決めておけば、被災地での災害復旧にいち早く貢献できることでしょう。
まとめ(「予報」から「仮説」情報へ)
日々の気象情報を、単にこの先の気温や天気を把握するための、受け身的な天気予報として見るのではなく、天気・気温などの気象条件によるニーズや行動パターンの変化に対する仮説立案や意思決定のための攻めの情報という位置づけで見ていただきたいと思います。そのために本部は、気象要素と仮説立案のポイントの関係を整理しておき、主導的に店舗に情報を発信する、これからの“大気候変動時代”の流通企業に求められる重要なミッションであると考えます。

それに関連して次回第11回は、気象要素別のチェックポイントやトリガー条件などを網羅的にまとめます。
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〇「常盤勝美のお天気マーケティングブログ」過去記事はこちら https://www.truedata.co.jp/blog/category/weather_marketing
〇「小売企業のための気象&購買データ活用法」バックナンバーはこちら 第一回 「気温40℃が夏の常識に!? 小売業は「地球沸騰化」にどう立ち向かうか」 第二回 「長期予報はもっと使える! 営業企画や販売促進への活用法」 第三回 「2週間予報や、過去データを活用した販促のやり方」 第四回 「気象×購買データのエビデンスに基づいた販促で、訴求に説得力を」 第五回 「季節イベント・季節現象との付き合い方」 第六回 「店舗での気象・購買データ活用マニュアル(基礎編)」 第七回 「店舗での気象・購買データ活用マニュアル(実践編)」 第八回 「店舗での気象・購買データ活用マニュアル(LSP編)」 第九回 「スーパーバイジングにおける気象×購買データの活用」
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。

